The French have a phrase for it.

13日に前の会社の同期のJが亡くなっていたそうだ。クモ膜下出血。彼はいつだって寝る間を惜しんで、自分が納得するまで仕事をし続ける人だった。

地方から東京にでてきた僕に初めて出来た友達のひとりがJだった。
若い頃、僕はお金の使い方がとても下手で月末に彼によくお金を借りていた。彼は会社に来る前から学生でライターをしていたらしく、会社に入ってからも出版部で編集者をしながら、「ライターの文章はそのままじゃ原稿にならないんだよ」と半分以上自分で書いていた。その当時その会社は破竹の勢いで僕は毎日が終電帰り。ぼくが彼にお金を借りていたのは、そんな時間でも会社にいるのが彼だったからだ。でも僕は深夜になって他の編集者が雑魚寝している中でも、彼が寝ている姿を見たことがない。

飲みにもよく一緒に行ったけど彼が合流するのはいつも夜半を超えてから。不健康自慢をしながら朝まで飲んでそのまま会社に戻っていった。仕事にそれだけ打ち込める彼がうらやましくもあった。

その後、僕も彼も別の会社に転職しそれ以来会うこともなかった。彼はその会社でもきっとずっと走り続けてきたのだろう。自分の好きな道をずっと走ることが出来たことは、きっと彼にとっては幸せな時間だったのかもしれない。でもそれで死んでしまったら元も子もないじゃないか。ちくしょう。

こんなとき、フランス語にはいい言葉がある。
フランス人はどんなことにもうまい言葉を持っていて、その言葉はいつも正しかった。


さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。

<長いお別れ> レイモンド・チャンドラー 清水俊二