山下恒夫「もうひとつの島の時間」コニカミノルタプラザ B

「島の時間はゆっくりながれている」と言う言葉に抵抗がある、とキャプションにあった。この抵抗に似た感覚が僕にもある。旅が嫌いな理由の一つがそれだ。


僕の故郷は京都で、学生のときは観光客の傍若無人ぶりや、店の人たちのずうずうしくぶしつけな商売根性に辟易としていた口だ。観光業が大きな位置を占める街でその必要性は理解しつつも、自分のスペースに土足であがられるような感覚がいまだに僕には残っている。冒頭の言葉はいかにも非日常を求めてやってくる旅人がいかにもいいそうな言葉じゃないか。だからこそ、その言葉に反発する気持ちが僕のどこかにもある。


とはいえ、山下さんは東京出身で八重山では同様に旅人のはずだ。たとえ移住したとしても、残念ながら決して当事者になることはできない。特にまだ閉鎖的なムラ社会が色濃く残っている土地柄だと聞く。たとえ山下さんがそう思えるほど近づいたと感じていても、相手はそう思っていないかもしれない。


それでも。


写真には旅人に対して最大限心を開いた人たちの姿が写し込まれていた。師匠が「旅の写真で島の写真であれば山下以上は難しい」と言っていたのが少しわかった気がした。